この廃棄物業界はとかく既得権益がいろいろな場面で存在しますが、この度、公取(公正取引委員会)が容リ協(日本容器包装リサイクル協会)へ警鐘を鳴らせましたので、その事案についてご紹介致します。
また、さらに驚くことに、後述しますが、容リ協がこの公取の発表と同時にコメントをHPで出しており、「・・同報告書において、当協会の活動や行為に・・問題はないと明記されております・・」というように、どう読んでも問題ないとは発表していないのに、このような受け止め方をコメントされていることにとても驚きました。(反省なしですかね)
なぜなら、公取の見解として、以下のようにまとめられており、確かに、ポツ1つ目の前段で「問題はない」とされていますが、その後の(実際の文書もこのとおり)太文字、下線が強く主張したいことなのに、それはスルーしているというちょっと常識では考えられない対応をされています。
独占禁止法上及び競争政策上の考え方
指定法人である容リ協が、法令等の規定を市町村、飲料メーカー等に提示することや、自らの入札が活用されるように市町村に対して働きかけること自体は独占禁止法上又は競争政策上の問題はないが、当該行為に伴い、市町村や飲料メーカーに独自処理を行うことを躊躇させる効果やその関与を制限する効果を生じさせる場合には、独占禁止法上又は競争政策上の問題を生じさせる可能性がある。
指定法人においては、市町村等に対して連絡をする際には、独自処理ルートを用いることを妨げるような容器包装リサイクル法制度に関する誤解等を生じさせないよう留意することが望ましい。
容リ法(容器包装リサイクル法)制定当時の背景等
容器包装のプラスチック(ペットボトル含む)、ガラスびん、紙製容器包装、アルミ缶などの4種類について、当時、再資源化が求められていたため、以下の品目についてリサイクルが義務付けられた。
その義務は、食品・飲料メーカーに、リサイクル(再商品化)が義務付けられた。メーカーは、容リ協へのリサイクル料金を支払いをすることによって、義務を果たしているとみなされる。容リ協(指定法人)は、メーカー(特定事業者)から徴収したリサイクル料金を、再資源化事業者へ支払うことによって、リサイクルしたとみなされる。
* 当時は、このルートが一般的で、容リ協から再資源化事業者へのリサイクル料金が支払われていた。
現在の状況
現在は、ペットボトルは、ボトル to ボトルという言葉でも想像できるように、ペットボトルの原料として、有償で取引されている(面白いことに、バージン樹脂よりも再生樹脂の方が高価で取引されている)。
その状況を踏まえて、容リ協は、以下の表からも伺い知りとれるようにメーカーからリサイクル料金をあまり徴収していないが(ここは前年比でもあるので不確定)、容リ協が再資源化事業者に有償で売却している。
市町村は市民への啓発活動等の理由(ボトル to ボトル等)から、容リ協を通さないで独自処理ルートで直接的に再資源化事業者へペットボトルを引き渡す取引が増えていった(容リ協を通すとボトル to ボトルになるとは限らないという理由もあり)
飲料メーカーも(メーカー名は明記されていないがサントリーなど)市町村と協定を締結してボトル to ボトルを促進させている。
容リ協の市町村、全清飲(全国清涼飲料連合会)への対応(*全清飲は飲料メーカーの社団法人)
前項のように市町村からペットボトルの回収量が減ったこともあり、市町村に対して容リ協は以下のような対応をとった。
市町村の独自処理ルートは、容リ法の方針ではなく不適切な取り組みであるとの説明
一度指定法人ルートから外れると戻れなくなるような説明
など、全清飲に対しても、令和3年10月に容リ協を通さずにリサイクルするのは、容リ法の精神に沿っていないとの文書を送付した。
その後の対応
全清飲は、容リ協からの文書を受け、飲料メーカー各社にボトル to ボトルの取組みを市町村に働きかけるのを一部抑制するような文書を発行
さらにそのあと、公取からのこの警鐘を受け、全清飲はその文書を一部撤回
公取の警鐘
このペットボトルの取引の容リ協の対応が独禁法に抵触する恐れがあること
グリーン社会も鑑みて、ペットボトルに関してはこの仕組みを変えるべき(競争政策上でも)
その他
一廃のペットボトルは有価物である一方、産廃のペットボトルは平均して逆有償
容リ協の反応
これを受けて、容リ協は即日に以下のようなコメントを発表しております。
同報告書において、当協会の活動や行為に独占禁止法上または競争政策上の問題はないと明記されていること
当協会は、本件が市町村の裁量であることを十分理解、尊重し、従来からこの点に留意した説明を行っているが、仮に市町村等に誤解が生じていたとすれば、これを真摯に受け止め、いっそう丁寧な説明に努めていくこと
入札制度は、主務省との協議のうえ構築してきたものであり、容リ制度の公平・公正を確保するために重要な制度と位置付け、予てより様々な検討を続けているが、今般のご指摘を受け、主務省庁のご指導も仰ぎながら、さらに検討を重ねていくこと
所管、まとめ
読み解く限り、この容リ協の取り組みが問題ないとそれを言いたいのではなく、「市町村への説明等に問題がある可能性があるので改めなさい」というのと、「入札制度は現在の取引価値と鑑みるともうそぐわないものだから早く改訂しなさい」、と警鐘を鳴らしているのにあまり真摯に公取の指摘を受け止めていないように思われます。
皆さんは、どう読まれましたでしょうか?
いづれにしても、今後の容リ協や環境省の対応を見届けていきたいと思います。
末筆ながら、この公取の調査内容は、とても読み応えがあり、ジャニーズの報告書よりも驚きととても勉強になりました。公取の皆様には敬意を表したいと思います。
坂本裕尚